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「家で魚を食べてますか?」儲けよりも食文化の存続を目指す大阪商人(1/5)

ここ数日の食事を思い出してほしい。この一週間で、魚を食べた人はどれだけいるだろうか。さらに言えば、「家で魚を調理して」食べた人はどれだけいるだろうか。

水産庁が発行する「水産白書」によれば2010年に、それまで魚の方が多かった年間消費量が肉と逆転した。2001年の40.2kg/人をピークに、2016年には24.6kg/人まで落ち込んでいる。

四方を海に囲まれ、さまざまな海産物に恵まれた日本。もちろん地域による差はあるものの、日本に住む人の食卓から、魚は確実に減っている。

新鮮な魚がどれかわからない。どの魚がいつ旬を迎えるのかわからない。切り身は割高でコスパが悪い、かといって丸魚は捌くことができない……。

つまり、みんな知らない。魚のことも、海のことも。

環境による漁獲量の変化や、食の多様性が広まったことによる嗜好の変化も影響し、日本人と海や魚、魚食文化の距離はだんだん遠いものとなってしまった。

「魚をもっと食べてもらうために」

大阪に、ほころんでしまった食卓と魚の関係を修復しようと奮闘する人がいる。

海鮮料理店「ワダツミ」を運営する利州株式会社の2代目、上田晋右(じょうた・しんすけ)さんだ。上田さんは持ち前の目利きで厳選した海鮮を味わえるこのお店のほかに、魚と触れ合える朝市「ざこばの朝市」も開催。すし職人の養成学校の運営も手がけている。

「ワダツミ」では新鮮な魚をカジュアルに提供することで「魚ってこんなに美味しかったんだ!」「家でも魚を食べてみようかな」という驚きと興味へとつなげる狙いがある。

そんな、人と魚をつなぐあらゆる活動をおこなう上田さんは、漁師でも魚屋でもない。魚を競り落とし、小売店などに販売する仲買人だ。

生産者と小売店の間、海からも食卓からも遠い位置にいる仲買人がさまざまな活動に邁進する理由は、魚が食卓にのぼる機会を増やしたいから。さらにそこには、20年後・30年後の食卓を見据えたある思いがあった。

上田さんが見据える「思い」とは?

話をうかがうべく、早朝の大阪市中央卸売市場本場に足を運んだ。

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