ビジネス

「家で魚を食べてますか?」儲けよりも食文化の存続を目指す大阪商人(4/5)

「魚、うま〜!買って帰りたい!」良質な体験を生む絶品ランチ

上田さんに連れられ、大阪中央卸売市場から大阪ミナミ・なんばへ。上田さんの挑戦の新たな形である、すし海鮮料理店「ワダツミ」へとやってきた。

ここでは、上田さんが関係を結んだ信頼できる漁師さんと提携して、その日ごとにオススメの魚介類を使って海鮮丼やすしを提供している。

新鮮なネタを用いたすしが並ぶショーケースには、鮮魚の販売コーナーも。専門職の気概がうかがえる

ランチを食べつつ取材をおこなうにあたって、上田さんと活動を共にする大阪市北区・天満の魚屋「鍵谷商店」の若き大将も駆けつけてくれた。

鍵谷 能成(かぎたに よしまさ)
天満の食卓を支える市場「天満市場」にお店を構える魚屋「鍵谷商店」の3代目。もともと鍵谷商店は乾物を中心とした商店だったが、代替わりをきっかけに鍵谷さんが鮮魚店へ業態をチェンジした。鮮度を最大限に保つ「神経〆」の技法と、若いスタッフたちの明るさで「おいしい魚を気軽に買えるお店」として、地元の家庭やお店から人気を集めている

「魚を食べてもらえる世の中にするには、漁師と仲買人と小売店が連携を取っていかなければならない」と考える上田さんは、全国さまざまな漁港に出向いて、本来縦割りで交わることのない漁師さんたちとも関係を築いている。鍵谷さんは、そんな上田さんに賛同して漁港巡りに同行したり、イベントを共催したりする、業界を盛り上げる仲間だという。

鍵谷商店。立派な魚が次々と締められていく様子はライブを見ているような臨場感

── 鍵谷さんは上田さんが抱える危機感や課題に対して、魚屋という立場でどんな思いを持っているんでしょうか?

鍵谷

僕が魚屋の立場でできることは、お客さんの日常の近くにあり続ける魚屋でいることです。気軽にいろんな質問やお願いごとができる魚屋があるだけでお客さんのライフスタイルは変わります。僕たちに聞いてもらえれば、どの魚をどう食べたらいいか、どう保存したらいいかアドバイスができるので。

── 「話せる」魚屋さんが近所にあると心強いですね。

鍵谷

お客さんの日常の近くにあり続けるために現代の便利なツールも活用しています。店には公式のLINE@のアカウントがあり、1日に3回、友だち登録してくれているお客さんのところに入荷情報が配信されるんです。お客さんはLINEに返信するかたちで注文ができるので、お店に来なくても魚を買うことができる。

── めちゃくちゃ便利なサービス……! 今日の献立が決まっていないときにおいしそうな魚の通知が来たら買っちゃいますね。

と、話しているうちに出てきた名物の天然生マグロ丼。新鮮な具材は非冷凍ゆえに味が濃厚

── うわ~! 美味しい!

上田

でしょう。その日に入手できるもっともおいしいマグロを使用しているので、うちのマグロ丼はマグロの種類を固定していないんです。運がよければ本マグロをお値段そのままで提供させてもらっています。

── たしかにこれは強烈な体験ですね。マグロってこんなにおいしかったんだ……。買って帰りたいです。

上田

そう思ってもらえるのは嬉しいですね。多くの人は「魚がおいしい」という体験が圧倒的に足りていないんですよ。

鍵谷

僕たちは、知識があるので魚を見たらビジョンが見えます。こう食べたらおいしそうだなって。でも、ビジョンがない人はそもそも値段すらつけられない。去年は上田さんといっしょに、試食があるイベントをたくさん開催しました。一度おいしいと思ってもらえれば、継続的にお客さんはつくんですよね。

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