ビジネス
「家で魚を食べてますか?」儲けよりも食文化の存続を目指す大阪商人(2/5)
漁港と顧客をつなぐ「場」をつくる仲買人

大阪中央卸売市場で鮮魚の仲卸業を営む老舗・利州の2代目。現在は社の副社長をつとめる
インタビューを始める前に、仲買人とはどのような仕事なのかを説明しておこう。
一言でいえば、仲買人は魚の売買を通じて、漁港と顧客をつなぐ仕事だ。各地の漁港であがってきた魚が市場に入ってくる、それを仲買人が市場内で競り落とし、買いつけた魚をお客さんである飲食店や小売店に販売する。

魚たちの鮮度や質を一瞬で判断し、適正な価格をつける。膨大な知識の積み重ねが必要な仕事。しかし「みなさん勘違いされるんですが、仲買人は目利きの能力だけあってもダメなんですよ」と上田さんは話す。

仲買人は、顧客であるお店やスーパーなどが、それぞれどういうニーズを持っているのか細かく把握しておかなければならない。
常日頃からやりとりを密にして「ここに頼めば望んだ魚を手配してくれる」「ここだったらこの魚をこの値段で買ってくれる」という信頼関係を築いておく必要があるのだ。仲買人には目利き能力と同等に、高いコミュニケーション能力も必要とされる。

また、上田さんは仲買人として魚を店などに売るだけではなく、イベント運営を通じて一般消費者との関係を積極的に築いている。
「見て、体験して、味わえる、食育パーク」をテーマにした「ざこばの朝市」は、1月と7月を除く奇数月の第4日曜日(*1)に、大阪中央卸売市場近くの公園で開催。一般客に向けた競り大会をメインにして、子どもたちが飲食業を体験するワークショップなど、回ごとに違うプログラムを用意することで、地域のファミリー層にも人気だ。
(*1)「ざこばの朝市」は基本第4日曜日の開催ですが、変わることもあります
未経験から短いスパンですし職人を目指すことができる職人養成学校「関西すし学院」では、親子向けのすしワークショップなども開催している。
それでは改めて、上田さんが見据える「思い」について、聞いていきたい。