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自分らだけではつくれなかった。漁師が人の意見を受け入れ生まれたブランド魚

三重県鳥羽市にある離島、答志島(とうしじま)は、伊勢湾の海の幸に恵まれた漁業の島だ。その答志島で2018年10月に誕生した新ブランド「答志島トロさわら」を知っているだろうか?

「答志島トロさわら」の特徴は、全国でもトップクラスの脂ノリの良さ。その味わいは「白身のトロ」と言われるほどだ。

その魅力を見える化するため、三重県水産研究所の協力のもと、サワラの脂肪含有量をフィッシュアナライザ(魚用体脂肪計)で測定している。数値を示すことで、差別化と品質保証をする取り組みだ。

例年10月頃、そのフィッシュアナライザで1日に測定されたサワラの脂肪含有量が3日連続で平均10%を超えた日に行われるのが「トロさわら宣言」。伊勢湾のサワラは秋から冬にかけて脂が乗るが、もっとも脂ノリのよくなる時期にはその数値が20%を超え、身が真っ白に見えるほどだという。

鳥羽市の行政・観光協会・漁協・漁師が連携し、「答志島トロさわら」のブランド化の取り組みが始まったのは2015年。漁業と観光の相互協力によって、伊勢湾のサワラの知名度を上げ、ブランドの名に恥じぬ鮮度と品質を保つために試行錯誤していったという。

その結果、通常のサワラに比べ、「答志島トロさわら」は魚価が2倍となった。全国放送のテレビ番組で取り上げられることもあり、メディアの注目度も高まっている。

近年、水産物の地域ブランド化が注目され、全国的にそうした取り組みは増えている。しかし、ブランド化には様々な課題がある。なぜなら、ブランドの基準の決め方、宣伝活動、漁業関係者の意見の調整など、それらすべてを生産者が担うことは難しいからだ。

ではなぜ、「答志島トロさわら」のブランド化は成功したのか?

鍵を握るのは、答志島の和具(わぐ)湾エリアで漁師をする井村俊之(いむら・としゆき)さんと、鳥羽磯部漁協の職員である久保田正志(くぼた・まさし)さん。

海と陸(おか)、それぞれの立場を越えてブランド化に尽力してきたおふたり。穏やかで丁寧にお話をされる久保田さんと、時に冗談を交えながら豪快に本音を話してくださる井村さん。

同じ目標に向かって共に歩んできた彼らの話を聞きながら見えてきたのは、魚のブランド化における、生産者をサポートする人々の働きの重要性。

立場の異なる彼らはどのように協力体制を築き、「答志島トロさわら」のブランド化を実現したのか。新ブランドの誕生秘話を聞いた。

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