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瀬戸内の魚と米のマリアージュ!? 海と陸と人をつないで新たな価値を生む元漁師(4/5)
── 今回の「寿司」に使われている米はどういったものなんでしょう。
牧
これは僕が何十年かぶりに復活させた金南風(きんまぜ)という品種なんや。昭和30年代から40年代前半くらいまでは愛媛県で主流だったお米なんだけど。病気に強くて育てやすい他の品種が出てきて一気に廃れちゃった。
山崎くんと出会って、金南風が、瀬戸内の魚と合うんじゃないかと思って。寿司屋の大将にお願いして、特別に握ってもらったのよ。

山崎
昔はその土地の魚に合う米が全国各地にあったんです。牧さんが金南風を復活させてくれたおかげで、魚も米も瀬戸内本来の味で勝負できる可能性が芽吹いてきました。
── これ、本当においしいです! 魚も米も、今まで食べたことがない味がします。
牧
いやいや山崎くんが用意する魚がうまいんや(笑)。どれだけ流通が発展しても、新鮮でうまい魚はその土地に行かないと食べられない。
山崎
魚も米も、もちろん野菜も昔はもっとローカライズされていたわけです。この寿司がもっと瀬戸内の飲食店で出せるようになったら、新しい観光コンテンツにもなるし、漁師も潤うはずです。

山崎
瀬戸内の海と陸がつながって、こんなにおいしいものができるなんて。僕が目指す方向は間違ってないと確信を持つことができました。
── このコラボは次につなげたいですね。
山崎
「せとぴち!」の〆の技術でもっといろんな魚種で試したいと考えています。ネタとか締め方とか、熟成の方法で、さらに最高のものに仕上げていきます。

それは、新事業を立ち上げることの苦労や、かつて仲間だった漁師たちの賛同を得られなかった苦悩、そういった逆境にもめげずに活動を続けてきたがゆえに掴んだ可能性を心から喜び、楽しんでいる表情だった。
牧さんも、一次産業に力を注ぐ若い仲間がさまざまな提案をし、実行していく様子に期待を向けていた。