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瀬戸内の魚と米のマリアージュ!? 海と陸と人をつないで新たな価値を生む元漁師(3/5)

新しい試みは、漁業×農業とのマリアージュ

「今夜は僕の新しい挑戦にむけて、一緒にお話したい人がいるんです」

夕方、山崎さんの誘いで、「せとぴち!」の加工場がある新居浜の漁港から場所を移し、取引のある松山市の寿司屋へと向かった。

“ハブ”としての山崎さんが見出した次なる可能性は「寿司」。

「ローカル魚×ローカル米」を組み合わせるにあたり、愛媛・瀬戸内の魚に注目する山崎さんと同じく、この地域の米に意識を向ける農家さんとコラボレーションしたのだ。

その農家である牧秀宣さんは、40年超の農業歴のなかで700枚もの田を持ち、環境に寄り添った農業を実践する人物。かつて播州(兵庫県南西部)から瀬戸内にかけて育てられていた米の品種を復活させ、均質化した日本の米事情に一石を投じている。

牧秀宣(まき ひでのぶ)
愛媛県東温(とうおん)市で米麦の栽培を中心に40年以上農業をおこなうジェイ・ウィングファームの代表をつとめる

── 魚の活用法として方法はいろいろある中、なぜ牧さんと組んでの「寿司」なんでしょうか?

山崎

はい、漁師と地域のハブとして活動している僕が次に実現させたいのが、海と陸のハブになること。「魚も米も瀬戸内生まれ」でつくる寿司の展開です。魚も米も本物の「地のもの」を使うことで新たな観光資源になって人を呼び込める。寿司の需要が上がれば普段は捨ててしまう知名度の低い珍しい魚も活用できるチャンスにつながりますよね。

僕は農業にもすごく興味があるんです。豊かな海を守るためには、海へと繋がる山や川の環境を守らなければならない。そこで農業のプロである牧さんから学んでいる最中なんです。

当日に用意された魚は山崎さんが取り扱う鮮魚。瀬戸内海で獲れた魚がずらりと並んだ

── 山崎さんが感じる牧さんの魅力ってなんでしょうか?

山崎

牧さんは40年以上も農業をしてきた実績があって。さらに、自然の恵みを商品化につなげるための行動力もある人なんです。

── たとえばそれはどんな?

山崎

そうですね……麦わらの空洞をストローにするアイデアとか。

── ストロー?

いま、麦わらを乾燥させて、茎の中にある空洞を利用してストローにできないか試作中なんや。プラスチックよりずっと自然にやさしいし、わらはそもそもが副産物だから製造コストもかからない。

── プラスチックストローは、海の環境を破壊すると警鐘が鳴らされていますよね。

わらは刻んで田んぼに混ぜ込んだり、家畜の飼料にもなったりと便利な素材。でも現代はそういう利用も少なくなってきたからね。わらを使ったストローはいいよ。きちんと水も通すし、廃棄も簡単だし。

山崎

すごくワクワクするアイデアでしょう? 僕はいずれ、魚から肥料も作りたいんですよ。魚を加工する際に出るアラがすごくもったいなくて。それをゴミとしてではなく循環できるように肥料にしたくて、牧さんからいろいろ学んでいるところなんです。

魚なんか捨てるとこないよ。貝殻だって肥料になるし。その肥料が畑の土を肥えさせる。土が豊かになれば、そこを流れる水が海にたどり着いて海の環境を豊かにするんや。

山崎

やっぱり漁業と農業ってつながります。循環するんですよね。

「海と陸、場所は違えど、牧さんは僕が師匠のように尊敬する人物なんです」と山崎さん

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