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製氷・貯氷施設の統廃合はなぜ進まないのか?―漁協事業の課題解決に向けて―

1.漁協が行う製氷・貯氷事業とは?

漁協は数多くの種類の事業を行っている。その中でも経営の中心を担うのが販売事業であることは言うまでもない。

大半の漁協が行っている事業の一つとして、製氷・貯氷事業が挙げられる。製氷・貯氷事業とは、漁や市場で使用される氷を漁協が専用の施設を運用して製造・貯留し、漁業者等に供給する事業のことである(図1)。氷供給機能は浜での生産・流通にとって不可欠な基礎インフラであり、漁協が担うことが適切なものである。しかし、同事業は漁協全体の事業総利益の中では4.4%を占めるに過ぎない相対的に小さな事業である(水産庁「水産業協同組合統計表」(2019年度))。さらに、水揚量の減少に見合った形で費用を低減させにくい施設型の事業であるゆえにその事業利益は慢性的に赤字であり、設備の老朽化という問題も抱えている。

(図1)製氷・貯氷事業のイメージ
出所:筆者作成

2.「協同組合らしさ」と「経営合理化」の狭間に立つ製氷・貯氷事業

そこで、事業管理費削減のための施設統廃合がこれまで推進されてきた。製氷・貯氷施設の統廃合は、背後機能の一部としてしばしば市場統廃合あるいは漁協合併と一体的なものとして行われる。しかし、統廃合は組合員にとっては利便性の低下に直結するものであり、実現のためには複雑な利益の調整を必要とする。つまり、製氷・貯氷事業は、組合員(漁業者)が自ら地域漁業を支える協同組合事業としての意義と経営合理化の要求という2つの現実の狭間にあるということである。その意味で、製氷・貯氷事業は、小さい事業ではあるものの、現在の漁協の組織課題を体現した事業であるとも言える。

製氷・貯氷施設の中で保管される角氷
出所:筆者撮影(写真は平潟漁協(茨城県)の施設内部)

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