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挑戦心で漁業を守る!~香川の組合の事例から~(後編)

風通しの良さが積極性に 養殖品目の拡大や人材育成も

水産加工品の開発・販売に成功した香川県小豆島町の池田漁協。漁協外部との協力関係や、リスクを恐れず責任を負うリーダーの姿勢が結果として実を結んだ。そんなリーダーの下の風通しの良い職場で、職員たちの動きも積極的。今後は、養殖品目の拡大や人材育成、オンライン販売など新たな取り組みに挑戦していく。

同漁協内部では意見交換が活発だ。「狭い事務所の中、少ない人数で雑談しながら、和気あいあいとやっている。部下が上司に話をしやすい空気がある」と職員歴10年の濵田勇氏。濵田氏は事務的な作業を取り仕切りながら、女性スタッフの中村美紀氏が商品開発やパッケージの題字を書くなど積極的に関与。中野郁夫参事も「実務はほとんど濵田と中村に任せている」と語る。

さらに「職員からの提案を否決してけんかになることもある。しかし、皆、根には持たない」と中野参事。漁協事務所で加工品販売を始めてからは近隣住人が商品を買いに来たり、喫茶店代わりにコーヒーを飲んでいったりすることも増え、オープンな雰囲気がいっそう強まっているという。

オープンな雰囲気の漁協事務所

中野参事は漁協勤務歴40年。就職当時を「小豆島に10の漁協があって、池田の売り上げは下から1~2番目だった。『まず1つ追い越そう』『次はもう1つ追い越そう』とやってきた」と振り返る。今も漁協職員には「給料を増やしたかったら頑張るしかない。『自分の給料の一部は自分で稼げ』と言っている」という。上司が責任を負うだけでなく、部下と意見を言い合い、奮起を求める姿勢も、新しいことに挑む機運を高めていそうだ。

今年からは漁協の事業として、カキの3倍体の養殖にも挑む。濵田氏は「漁業者の経営が厳しく、新しいことに手を出しづらい現状。まず組合で試してみたい」と意図を説明する。3倍体のカキは生殖能力がなく、抱卵期にも卵に栄養が取られないために身が痩せず、通年出荷が可能で、都市部のオイスターバーなどで高値を期待しやすい。徳島から種苗を仕入れつつ、組合が漁業権を持つ海域のうち遊休化している箇所で養殖、他産地産との品質の違いを検証し、商品化の可能性や売り先を探っていく考えだ。

3倍体のカキを育てる

今後さらに、海藻養殖を構想中。今年は水産物販売のプロや漁業者の気持ちをよく知る漁家の孫、ITのプロなどを採用し、人材育成、事業の多角化も見据えている。また、新型コロナウイルス禍で対面での加工品の商談をしづらくなったことから、2022年2月には招待制のオンライン見本市に着手。続々と新たな取りみに挑戦している。

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