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挑戦心で漁業を守る!~香川の組合の事例から~(後編)

努力の陰にマリンバンク 相談役として人をつなぐ

3回にわたり、池田漁協(香川県小豆島町)の水産加工商品開発や販売など、先駆的な取り組みについて紹介してきた。漁協の自助努力に加えて見逃せない点に、漁協系統金融機関・JFマリンバンクの協力もある。2022年2月に同漁協の商品を出品したオンライン見本市は、県内漁業者に貯金・融資などを提供する信漁連や、各県の信漁連の束ね役を担う農林中央金庫(農林中金)の後押しもあって実現。JFマリンバンク全体として、池田漁協のような優良事例を後押ししつつ、その横展開や漁業者の悩み相談などを活発化させている。

オンライン見本市

新型コロナウイルス禍によって水産加工品の対面の商談機会を失っていた池田漁協に対し2月、香川県信漁連(高松市、嶋野勝路会長)と農林中央金庫高松支店(同市、椛島鉄太郎支店長)がオンラインの見本市を開催。この際に利用したBIPROGY(東京都江東区、平岡昭良社長)のバーチャル見本市サービスは、比較的安価かつ操作が易しいことが特徴で、農林中金とJF全漁連の開いた「JFマリンバンク水産業連絡会議」で紹介されたものだった。

商談会では、同連絡会議で過去に登壇していたただいま(同中央区、佐藤翼社長)が池田漁協の商談成約支援をしつつ、東京のバイヤー(百貨店、卸売業者)を招致。その後、漁協とバイヤーの商談が継続した他、地元メディア2紙で取り上げられ、香川県信漁連や漁協側が新たに販売ノウハウを得られるなど、成果があったという。

同漁協は現在、加工品を外注で生産するが、将来的には自ら加工場を持つ構想もあり、加工場の稼働に必要な規模の販路を獲得したい考え。販路拡大と加工場建設がかなえば、信漁連側も融資の機会を得られ、関係者全体に恩恵が生まれそうだ。

香川から全国へ

香川県信漁連は県内に離島も多く、移動の手間も大きいが、それでも多い漁協には週に4回、少ない漁協においても週1~2回は訪問するなど昭和のころから漁業現場を訪問する伝統がある。近年はスタッフが漁協や漁業者から得た情報を、融資の話に限らず上司に報告するように意識。漁協や漁業者の生の課題を知ることで、信漁連も一緒になって対応策を考えることが、漁業現場の経営改善、最終的には融資などの仕事にもつながるという考えだ。

漁業現場や県行政からの要望の強い後継者確保についても、香川県信漁連が農林中金と協力する。20年度から「かがわ漁業後継者対策研修会」と銘打ち、継続的に会合を開く。漁業者の事業承継のため、先代経営者と後継者の食い違いの防止策などを伝えている。また、漁業種によって抱える課題が異なることから、昨年はイリコ漁業者に特化した同研修会を行い、より具体的に後継者確保策を掘り下げてもいる。

後継者確保のセミナーの様子

漁業者を訪ね、共に課題と向き合う香川の信漁連。全国のJFマリンバンクが19年度からの中期戦略で「浜に出向く体制」の強化や「漁業者経営相談機能」の強化を掲げる中、先駆的な事例といえよう。漁業者と漁協、金融機関、一丸となっての水産振興。そのモデルケースとして、今後の広がりに期待がかかる。

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