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「えりも岬に生まれてよかった」世話焼きおばさんがいる豊かな地域コミュニティ(2/4)

次の世代へつなぐための、産廃を資源にする商品開発

── 残ってくれた若い人たちが結婚して、漁師のお仕事も脈々と受け継がれていくわけですね。

そう。ただ、次の世代につなげるには資源がなければいけないから、埋もれた食材を掘り起こそうっていうことではじまったのが、ヤマノカミの商品開発。ヤマノカミって私たちは呼んでるけど、一般的にはオニカジカっていう魚ね。

増えすぎて駆除したいくらいだったんだけど、なんとかできないかってことで昆布巻きを作ってみたらおいしかったの。

── 鮮魚のまま売ることはできない?

えりも町には仲買人が数店しかないから売りさばけないし、そもそも値がつかないから扱ってくれないの。だから、カジカ専門でかまぼこにする水産加工所とか、養殖用のエサにする産廃処理業者に持っていくしかなかった。

── ヤマノカミが売り物になれば、産廃だったものが資源になると。

浜に後継者を残すためには、付加価値をつけてあげないといけないでしょう。毎年少なくても2、3人は若い漁師さんが入ってきたんだけど、今年はゼロだった。いろんなものが利益になれば、漁師を継ぐって人もいるのかなって思うんだけど。

資源がなくて生活していけないような場所では「ここに残れ」なんて言えないし。私たちみたいな年寄りが知識を得て、少しでも若者たちに希望を持たせてあげないとね。

娘がふと言った「襟裳岬に生まれてよかった」

── 自分たちの世代で付加価値をつけて、次の世代が少しでも希望を持てるように。

そう。もちろん無理やり残らせるのではなく、子どもの頃から地域の文化に触れさせてあげて、この土地を好きになってもらえるようにしないと。「ここに残りたい」と思う次の世代を増やすのは、大人の役目。

── 地域で子育てしているような雰囲気が伝わってきます。

やっぱり子どもたちには楽しみをもたせてあげたいよね。みんなで文化や伝統を大事にするっていうのが、とっても大切だと思うの。

年に一度、「襟裳神社秋季例大祭」って大イベントがあるんだけど、神輿を先頭にして、保育所の子たちから小中高生に成人の山車、それに「襟裳神楽」とか「えりも岬少年神楽」で、地域が一丸となって襟裳岬市街地を練り歩くのよ。そういう行事を通して、地域の人たちみんなで、子どもが成長していくところをずっと見守ってるの。結婚して遠くに行った子たちも、お祭りに来て「懐かしい」って言うよ。

よその土地も魅力があるけど、ここにいるからには、自分たちの力でこの土地をなんとか輝かせたいし、子どもたちにも夢と希望を持たせてあげたいよね。

川崎さんが用意してくれた料理が食卓に並んだ。「ちょびっとだよ」と言われて出てきたのがこの量!

── いつからそんな気持ちになったんですか?

考えはじめたのは20代からかな。それで31か32歳くらいになったとき、うちの旦那に相談したの。「踊りを教えたいと思ってるんだけど、どうだべ。まずはえりも岬小学校の児童を対象にこぢんまりと」って。そしたら「おめぇがやれると思ったらやれ」って言ってくれた。一緒に踊りをやることになった子どもたちも、「今日は練習があるから早めにご飯食べよう」って言うと「わかった!」って素直に聞いてくれたよ。

そうしてるうちに下の娘も小学生になって、車に乗ってるときに遠くを見ながら「お母さん、舞子ね、襟裳岬に生まれて良かった」って言ったの。その姿がいまだに忘れられない。

── それで娘さんは今でもこの街に残っているんですね。

娘は昆布の仕事をやっても何やっても楽しいって感じで、1年前から女性部に入ったの。おかげさまで襟裳岬は若い人が残ってくれてる。

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