ビジネス
まだまだできることはある~地域商社「福津いいざい」~
福津市産品の市外販路拡大事業
飲食店や大手小売店などを対象として、市外の販路拡大にも着手している。例えば、展示会・商談会に出展したり、個別事業者への営業活動を実施している。加えて、積極的にメディアへの露出も行っており、PR活動にも力を入れている。
新型コロナウイルス感染症が拡大してからは、カタログギフトや通販サイトへの展開も図っている。2020年5月からは福津いいざいのHPに通販サイトを開設しており、同年12月からは楽天ECサイトに出店している。
こうした地道な営業やPR活動、ECサイトの活用によって、市外への販路拡大事業の取引件数および取引額は増加傾向にある。



直売所「お魚センターうみがめ」運営事業
福津いいざいは、「お魚センターを魅力ある直売所へ」をスローガンとして、水産物直売所である「お魚センターうみがめ」を運営し、そこに陳列する商品の充実やイベントの開催に取り組んでいる。
福津いいざいが同センターを運営するようになってから、減少傾向だった売上高が回復している。2020年度が過去最高の売上高となり、約1.2億円の売上を達成している。2021年度も1.2億円を少し下回る程度で、ほぼ同水準を維持している。

福津市内の3つの直売所間での流通事業
水産物を直接販売しているお魚センターと、農産物を直接販売しているあんずの里市およびふれあい広場ふくまの3つの直売所は、相互に商品を流通販売している。この取組みは直売所の魅力向上につながっている。
2021年度におけるお魚センターでの両直売所の農産物売上高は約4.6百万円、反対に両農産物直売所でのお魚センターの水産物売上高は約9.3百万円である。これらを合計した同センターの直売所間流通売上高は13.9百万円であり、年々増加傾向にある。


農林水産従事者支援事業
福津いいざいは、農林水産業従事者を支援する事業も行っている。例えば、農家で生鮮品として出荷できなかったイチゴの加工販売や、鮮魚として市場出荷ができなくなった魚の干物加工などを実施し、収益が見込めなかった農水産物を商品化している。これによって、農漁業者の収益の確保に貢献している。
また、福津いいざいは、生産者からの依頼があれば、ボランティアとしてイチゴの収穫や小型定置網の網揚げなど短時間の作業を手伝うこともある。
その他の事業として、福津市の観光事業者への産品提供、6次産業化・土産品開発(33商品の企画開発を実施)、福津市等からの受託事業(ふるさと納税運用代行業務など)、買い物困難地域での生鮮食料品販売事業(現在は新型コロナウイルス感染症の影響で中止中)がある。


以上のように福津いいざいは、販路開拓や新商品開発などの事業を通じて農漁業者の所得向上に貢献している。福津いいざいを参考事例として、漁協自らが新たな事業を展開したり、地域事業者と連携して地域商社を設立することなどを検討してみる価値はあるだろう。
写真提供 一般社団法人 福津いいざい
執筆 株式会社 農林中金総合研究所 尾中謙治