ビジネス

若い芽を摘ませないため、先輩がフォロー。
明石浦漁協が育む、なんでもやれる対応力

男子校部活のような文化で築いた対応力

── 若い子に、セリの最初と最後に立たせて鍛えたなど、人材育成のやり方がおもしろいですね。

育成って言ってもぶっつけ本番ですけどね(笑)。でもここで一番大事なのは、漁師さんが分かってくれてるってことですよ。漁師さんからしたら自分の魚の値付けをするもんですから。セリ人に対する鋭い視線は常にありますよ。

新人のセリ人に自分の魚を扱われるわけですから、どう考えても不安だと思いますよ。ベテランのエース級にやってもらった方がいい。例えば1500円の値がつくはずのモノが、「500円」と言ったらそれで決まりなんですよ。そのリスクを漁師さんが理解してくれている、その根っこの部分がものすごいありがたい。

── 漁師も含め、次の職員、漁師を育てなきゃっていうのが暗黙でやっているわけですよね。

僕もそうでしたけど、「イベントやろう」って言われたら「それ自分らの仕事!?」って思いながらもやるんですよね。若い子らも、最初は「やるぞ」言われてやってても、結果、それも経験になってきて、これもひとつの仕事なんやなってナチュラルに受け止めていくんじゃないかなって。ここにいると、自然といろんなことが起こるんですよね。次の漁師を育てるって意味では、セミナーなんかも若手漁師30名程度を集めてやりましたよ。なぎさ信用漁業協同組合連合会(本店・兵庫県明石市、黒田俊文理事長)、農林中央金庫大阪支店(大阪市・福田支店長)さんにも手伝ってもらって、「漁業経営」への意識を高めてもらいました。色々なことに手を出していて、最近では釣り堀もやってますからね。

── 釣り堀?(笑)。

去年オープン。漁協なんですけど、レジャー会社みたいなこともやっています(笑)。うちは、なんでもやれる対応力はめちゃくちゃあると思うんです。

── みなさん普通の業務を抱えてるんですよね。やるってなったら文句言いつつも……。

「やろう」って言われたらやるんです(笑)。先輩方自ら動くしね。

── いいですね、男子校の部活みたいな雰囲気。考えずにやろうって言う。「なぜやるか」の根底にある明石浦のミッションを言語化すると何なんでしょうか?

結局、周りがやるから。先輩がやるから。それしかないと思うんやけどね。「魚のためならなんでもやります!」みたいな答えがいいんでしょうけど(笑)。でも熱量はそれくらいありますよ。

── 漁協に30年いる参事が「言葉にできない」って、文化として染み付いているんですね。では、これからやっていきたいことは?

僕はね、しっかりセリをやって、お客さん増やして、漁協を運営していくっていうのは軸にはしておきたいなって。これまでまあまあいろいろとやってきたので。あとは次の世代が色々な変化に対応できる集団にならないとダメかなって。今後、何か対策せないかんってのは出てくると思うんですけど、その都度対応できるポテンシャルはあると思います。

── 「集団」と言う言葉から、「みんなで」っていう意識を感じます。

それはもうほんと。僕がこうやって漁協の代表としてしゃべってますけど、実際、この10年現場でやってきたのは下の子らで。僕は、東京で営業出てペラペラしゃべっとっただけですから。本当、それはありがたいですよ。

── 男子校っぽい文化と言いましたが、セリ場に、女性の職員さんもいらっしゃいますよね。

魚を触る仕事をしたいっていう子がいて、現場で働いてくれているんですよね。漁協の求人で女性が手を挙げてくれるなんて、これまでまったくなかったんです。そもそも募集も事務職しかなかったんで。

現場に入って誰もが最初にやる仕事が、漁協が買った魚を運ぶことで、その女性職員もそれからスタートでしたが、今はセリに魚を出すところのポジションにいますから。この仕事、結構重要なんですよ。半年持つかなって思ったりもしましたが、実は今、その子が漁師の信頼を勝ち得ているんですよね。

これから、絶対的に漁業の現場の考え方とか変わるんだろうなって思うんです。漁師さんが獲ってきた魚を単に箱に詰めるだけでは、すでに成り立たないようになってますし、これからも変化するでしょうから。明石浦漁協としては、いろんな人や状況を、自然と受け入れていきたいと思いますし、自分たちのこういった取組みが県内、さらには全国に拡がっていけば、日本の水産業の活性化にも繋がっていくと思います。

取材・文:服部 木綿子
 note: momememo
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撮影:奥 祐斉
 Facebook: yusai14
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撮影:長谷川琢也
取材・編集:くいしん

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