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漁協の幹部、多数輩出。人材育成の組合学校、重要性高まる

志望動機を重視した入学試験

入学にあたっての試験は、志望動機や学校入学において目指す目標についての論文となっている。都道府県漁連が面接試験をし、何より真面目に漁協で働きたいという志望動機を重視している。

学費は1年間の寮費、食費込みで173万3,000円。現職者の中には、漁協が負担するケースも多い。

実務重視のカリキュラム

入学後には、協同組合論などの基礎7科目に加え、漁協簿記、水産物マーケティングなどの実務11科目のカリキュラムを用意している。以前は理論が中心だったが、即戦力となる人材を育てるため、2004年に系統の意見も聞きながら、JF全漁連とカリキュラム内容を一部見直し取りまとめの上、以降は実務の比重を大きくしている。

日商簿記3級、危険物取扱者乙種第4種、信用事業業務検定試験などの資格取得にも力を入れており、漁協の幹部候補生であると同時に即戦力としても働けるようにしている。また、JF全漁連や農林中央金庫等の全国団体を訪問し、広い見地で水産業界の動向を学ぶ機会も用意されている。

少人数授業は教室を広々と使い、講師が生徒一人一人に話しかけるように授業を進めている。

夏休みには漁協での実習も

夏休みには20日間以上漁協での実習を課題としており、戻ってからはレポートの提出を義務づけている。現職生の場合には在職の漁協へ戻り半年間の学びを活かしてみっちり働いたり、違う漁協を見て勉強することもある。

今年は、コロナ対応ということで半分の10日間になったが、吉田校長は「いずれの場合でも機会を有効に活用してもらえていると思う」といい、「実際に現場へ行って戻ってきた学生たちは一回り大きくなって帰ってくる。現場で働く漁協職員はかっこいいので、あこがれにもつながっている」と実務の効果を実感している。

学生たちからは「もっと現場へ出たい」という声も上がっているといい、吉田校長は「可能な限り実務の時間を増やしたい」と方向性を示す。

漁業現場を見るためにも、年に一度、漁協等視察に足を伸ばしている。今年は9月に静岡県の焼津において、JF小川の取り組みを学び、また静岡県立漁業高等学園との交流を行い、その後、東伊豆のJFいとうに移動し定置網漁船に乗船し、網起こしを見学。

  • 小川漁業協同組合(静岡県焼津市)訪問。
    「漁協職員が商品開発したサバ加工品の取り組み」を学ぶ。(2020/9/17)
  • いとう漁業協同組合富戸支所(静岡県伊東市)にて、「漁協自営定置網」を体験。(2020/9/18)

ほぼ100%が水産業界に就職

卒業生のほとんどが漁協、漁連、信漁連はじめとする水産関係団体へ就職する。吉田校長は「組合学校の卒業生は本当に評価が高い」と胸を張り、長崎の信頼する漁協専務から「立派な漁協職員が一人いると漁業者を100人は育てられる」と聞いた話しを紹介し、優秀な漁協職員を輩出する組合学校の重要性を改めて強調する。「協同組合は金や資本だけでなく、人との付き合いが大事」と話し漁協職員が漁師をサポートする重要性を説く。

さらに吉田校長は「都道府県単位での行政・系統支援策について、新規漁業者の就業支援は各方面で始まっている。一方で、漁協職員にかかる人材育成は、これまで漁協を支えてきた団塊世代が抜けていくといった現状の中で、都道府県段階でようやく動き始めたのが現状」との認識を示し、「漁業者とともに浜を盛り上げていく漁協職員を養成していくためにも、JFグループの共有財産である組合学校をぜひ利用してもらいたい」と話す。

JFグループの総意として決定した新運動方針(2020~2024年度)においても、「JFグループ唯一の教育機関である組合学校をより積極活用することで、職員の養成に取り組む」ことが確認されており、今後もJF全漁連との連携を強めていく。吉田校長は「組合学校へ人材を送ることを漁協の将来への種まきと考えてもらえたら」と話し、これまで以上に関係各所に組合学校の活用を呼びかけていく考えだ。

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