ビジネス

ニーズは現場にある。漁協が倒産リスクを取って1.5億円の加工場をつくれた理由

漁師のためになることをしたい

── 輪島ふぐは一次加工のみで、二次加工はされていないんですか?

何十年も前から干物づくりなどをされている二次加工業者さんたちがいるので、うちは最低限の加工だけをしています。彼らは味付けのプロですから、競合せずに儲けてもらえるようにしています。

── 地元の業者が儲けられることも考えられているんですね。輪島ふぐは、何割くらい県内に卸しているんですか?

8割くらいは県内です。「日本一」と言っているのに、観光客が来ても地元で食べられなければおかしいですから。輪島市内の8、9割の飲食店で食べられるようになっています。「輪島市はふぐの町なんだ」と思って観光に来てもらえれば、街が潤う。そのアイテムのひとつとして「輪島ふぐ」があると思ってます。

「輪島ふぐ」は商標登録してますが、ロイヤリティーは一切とっていません。オープンにすることで名前が拡がると思っています。

── 本当に大きな視点でビジネスを考えられていますね。石井さんのモチベーションはどこから来ているのでしょうか?

うちは祖父も父も漁師なんです。だから「漁師さんのためになることをするのが使命だ」と思っています。漁師が儲かるためには、漁協が儲かるようにしなくてはならない。でも、水揚げ量は何十年も下がり続けている状況です。攻めの姿勢でいなければ、現状維持さえできないと思ってやっています。

限りある資源だからこそ、安売りしない

── 日本の漁業をもっとよくするためには何が必要だと思いますか?

「水産資源は無限ではない」と意識することです。少ないものを、加工やブランディングで付加価値を付けて売らなければいけない。大量に獲って、安く売る時代は終わったんです。海外でも日本の高品質な海産物を、高値でもいいから買いたいという声はよく聞きます。

── 限りある資源だからこそ、売り方を考えなければならないんですね。

これからの時代は、鮮度、品質に今まで以上にこだわる必要があります。「輪島ふぐ」のおいしさが知られるようになったことで、「輪島の海産物は質が高い」と言ってもらえるようになりました。そのおかげで、輪島のすべての魚に付加価値が付いて、人気が高まっています。すべてがつながってくるんです。

── 石井さんが仕事をする上で気をつけていることってなんでしょう?

加工場を含めて、漁協を企業として働きやすい職場にすることですね。休みを取りやすくしたり、一人ひとり、不満や悩みがないか話をするようにしています。最近は辞める人はほとんどいなくなりました。

もちろん、こうして漁協が盛り上がったのは私の力だけではありません。「人は財産」だと思ってます。「みんな俺の宝ものだ」とパートさんや職員みんなに言っています。

── 石井さんに言ってもらえると余計にうれしいでしょうね。輪島支所は若い人が多いことにも驚きました。次世代の担い手が少ないことも漁業の課題のひとつだと思います。

3年ほど前から、若手に仕事をどんどん任せて、私は手を出さないようにしています。そうしないと、彼らの責任感が育ちませんから。

輪島市と協力して、学校給食で「輪島ふぐ」を食べてもらう取り組みもしています。「輪島にはすごい海産物があるよ」と子どもたちに伝えるのも、私たちの使命ですから。将来、輪島から巣立っていく子どもたちが、全国に輪島の海産物のよさを拡散してくれるはずです。

── 未来への投資ですよね。石井さんの今後の展望を教えていただけますか?

それはまだ秘密です。新しい提案をするときは、1年以上前から準備をして、あらゆるハードルを越えられそうだと思えてから発表するんです。まるでそのときに思い付いたみたいにね(笑)。トライできそうだと思った時点で、公言させてもらいます!

取材:⻑⾕川琢也
 Twitter: @hasetaku
⽂:都⽥ミツコ
撮影:海野政⼈
編集:くいしん
 Twitter: @Quishin
 Facebook: takuya.ohkawa.9
 Web: https://quishin.com/
記事提供元:Gyoppy! (ギョッピー)

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