ビジネス

33歳IT社長が「知識ゼロ」「漁師の知り合いゼロ」から取り組む漁業のDX

データとつながりを武器に「不確実性」と戦う

ISANA公式サイトでは漁師さんのインタビューを行っている

── お話を伺っていると、新藤さんたちが漁師のコミュニティにちゃんと入り込もうとしていることが伝わってきますね。その上でなんですけど、冒頭にお話されていた、水産業が抱えた「不確実性」の問題。この解決にどうつなげていこうと考えていますか?

超長期的な視点だと「全世界で資源管理をして、魚を育てて獲っていきましょう」って話になるんですけど、そこまではまだ遠い。僕らもデータをとっていて、いつかは答えが出るものだと思ってはいるけれど、魚という資源の変動のメカニズムについては、まだしばらくは答えは見つからないと思います。

そうだとすれば、資源の変動はあるものとして考えなければならない。より不確実性に対応できる仕組みを国全体として作らなくてはならないと思っています。

現状、漁業者さんは国の規制によって漁ができる海域が決まっていて、そこを出て漁はできないことになっています。ということは、どれだけがんばって技術を磨いてきていたとしても、ある日突然、海区から魚がいなくなったら、途端に食えなくなって、廃業する以外にないわけです。これってあまりに不条理ですよね?

── おっしゃる通りですね。

そんな中でも無理やり生計を立てようとして漁に出ると、余計に魚が減ることにもつながってしまう。ですから、もっと柔軟に、魚のいるところに人や船を配備できる仕組みが必要じゃないかと思うんですよ。

── 僕らが取材していても、漁師のなり手が不足しているという話がある一方で、すごく稼いでいるところは人が余っていて、「これ以上増えたら困る」という声さえ聞きます。船も然りで、「作るのに金がかかるから困る」と言っているところもあれば、逆に余っている漁村もある。

うちも一部、中古販売を手伝ったりもしてるんですが、本当にもったいないなと感じることは多いです。港々の不確実性や資源変動に対応して、柔軟に漁業ができるとか、協力し合うことができれば、本当は解決できる問題がたくさんあるはずで。

でも、そのためにはまず、そもそも魚がどこまでいなくなっているのかとか、どこに潤沢にいるのかというデータが必要だし、業者同士の協力も必要です。

── 現状はその両方が足りていないということですよね。

そうなんです。そこの協力体制があると、冒頭にお話したように、魚価を上げるための交渉力を持つことだってできますし。「魚を食べたい」って人は山ほどいるんですから。売り手の力が上がれば、価格は上がるし、いまより儲かるはずなんですよ。

「不確実性に対して柔軟性を担保する」というのは国レベルの話なので、もちろん僕ら一社では絶対にできないこと。いろいろな方とパートナーシップを組んで、チームとして課題解決していかないといけない。だから、水産業に関わるさまざまなプレーヤーとガンガン提携していきたいと思っています。その一環として、現在、JFマリンバンクと提携し、漁協でICTに関する理解を深めるための漁業者向けセミナーを開催しています。
漁業者からは「ICT機器について学ぶ機会はこれまでなかった」等の声も聞きます。

僕らの強みは、データを収集する仕組みとともに、全国の漁師さんをつなぐネットワークを持っていること。それを元にJFマリンバンクや行政等、いろいろなプレーヤーと提携できれば、この業界が抱える「不確実性」に対して、やれることはまだまだあると思っているんです。

取材・文:すずきあつお
 Twitter: @kincsem629
取材:長谷川琢也
 Twitter: @hasetaku
編集:くいしん
 Twitter: @Quishin
 Facebook: takuya.ohkawa.9
 Web: https://quishin.com/
記事提供元:Gyoppy! (ギョッピー)

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