ビジネス

挑戦心で漁業を守る!~香川の組合の事例から~(前編)

組合がリーダーシップ発揮 ノリ不作ばねに商品開発

新しいことに挑む、というのは勇気がいる。これまでになかった産品をつくる、売り先を増やす。構想をすれば、コストはどうする、責任は誰が取るといった葛藤が生まれる。しかし、漁業の生き残りを懸けて漁協や関係者がリーダーシップを取り、新しいことに挑戦する機運も生まれつつある。代表的な例として香川・池田漁協(小豆島町)の事例を紹介する。

池田漁協は、主力産品の不作という苦境をばねにした。10年前から近隣の水産加工場と連携して商品を開発し、ブレずに地場産原料にこだわることでストーリー性を演出。その後もオンラインでの商談会、養殖品種の拡大など新しい取り組みに積極的に挑んでいる。

同漁協が近隣の水産加工場と連携し開発した独自商品が、カツオ節よりも濃厚な味わいが特徴の「いりこぶし」、チリメンをオリーブオイルで揚げた「揚ちりめん」など。商品は徐々に売り上げを伸ばし、経常損益の黒字化に成功した。「漁業者や漁協役職員の収入アップにつながっている」と同漁協の中野郁夫参事は話す。

いりこぶし

きっかけは10年前、主力産品の生産低下だった。「当時この辺りはノリ養殖がメインだったが、栄養塩不足など海の環境が変わり、どん底の状態になった」(中野参事)。ノリ養殖業者は廃業していき、生産者は1軒しか残っていなかった。漁協に販売手数料収入や資材などの購買収入が入らなくなった。さらに、生産者の高齢化など周辺の漁村地域と比べても衰退は早かった。「漁業者や職員の収入が減る一方では、との危機感があった」(同)

ただ、商材には自信があった。漁協職員の濵田勇氏は「近海の水産物の品質は高い。島周辺の潮流の複雑さや地形の多様さ、良い環境で育っているのでは」と胸を張る。

10年前の時点で香川県漁連は加工販売部門を持ち、商品を開発していた。これに倣い、同漁協も近隣の水産加工業者に委託し地場産原料の加工品開発を開始。まずヒットしたのが、島内の通販業者の依頼で出品した「いりこぶし」だった。「いりこぶしはカツオ節より濃厚。独特の風味があり、『1回使うと常備しないと』という声も出るほどだった」(濵田氏)。

リピート顧客を獲得しながら、その後は近隣のイタリアンシェフとコンフィなど洋風アイテムも開発。5年前には各商品のパッケージデザインを統一し、ブランドイメージを確立しながら、各地の商談会などを通じて販路を確保していった。

ブランドの確立に向けたポイントは「ブレないこと」。「とにかく地場産にこだわる。できる限り小豆島・香川産、少なくとも瀬戸内海産。譲れない部分を守ることでストーリー性が生まれ、ストーリーが認められるからこそ適正価格で買ってくれる方が出てくる。漁業者からの仕入れを適正価格で買い上げる。漁協の役割は、漁業者を豊かにすること。買いたたいてしまえば、漁協が活動をする意味がない」(同)という考えだ。商品情報やレシピだけでなく、漁業者の思いや活動の意義も含めて発信している。

>>

関連キーワード

あわせて読みたい

お問い合わせやご相談は、
お近くのJFマリンバンクまで

下記のページより「お住まい」または「勤務地」の店舗をお探しいただきお問い合わせください。

今すぐ最寄りのJFマリンバンクを探す