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挑戦心で漁業を守る!~香川の組合の事例から~(前編)

組合リーダーの姿勢が鍵 リスク恐れずできることから

「自腹を切る覚悟もあった」と中野参事

水産加工品の開発・販売に成功した香川県小豆島町の池田漁協。成果の裏に、水産加工場やシェフなど漁協外部との協力関係があった。この協力関係を生み出したのがリスクを恐れず責任を負うリーダーの存在だ。

一般的に漁協の仕事は、産地市場の運営や、漁業者への燃油や資材の購買など多岐にわたる。市場から魚を出荷するだけでなく、加工品を開発して販売する、特に漁協外部と連携するとなると、別途コストや労力がかかってくる。しかし同漁協は10年前、主要産品・ノリの不作という逆境の中であえてさらに労力をかけ、加工品の取り扱いを決断した。

これが可能となった背景として、職員の濵田勇氏は「組合長の交友関係が広かったこと、職員が『こうしたい』と意見すると任せてくれる気質があること。そして、漁協職員歴当時30年のベテラン・中野郁夫参事が漁業の良い時期も衰退期も知っているため、衰退の早期からちゅうちょなく動きだせたこと」を挙げる。

中野参事本人は取り組み当初を「面倒がる役員はいた。『失敗したら誰のせいになる』『役員が責任を取らされるならやらないでくれ』という人もいた」と振り返る。反対者をどう説得したのか、問われると「説得したわけではない。勝手にやった」と笑う。極力、組合のお金や負担がかからないよう、まずは設備投資のいらないタコの干物を開発。デザインも外注せず職員自ら筆を執ってパッケージを書いたり、印刷もカラー刷りでなく2色にしたりとコストアップを避けた。「タコはもうからなかった」というが、できることから努力するという機運が生まれた。

その後、転機となったのは、島内の通販業者からの「商材がないか」というオファー。通販業者との接点は参事と高校の野球部の先輩後輩関係だった。通販会社を通じて出品した「いりこぶし」が人気を博したのだ。地場産カタクチイワシを使い、カツオ節以上に濃厚な「いりこぶし」にはリピーターがつき、事業は黒字を計上。「収益が上がり、組合員の負担が減ったことで加工販売業への不満の声はなくなっていった」(中野参事)

揚ちりめん

チリメンをオリーブオイルで揚げ、魚の嫌な臭みを抑えた「揚ちりめん」も主力商品。開発当初、「加工業者側から『高価になりすぎるため、売れない』と言われた。だが、私は『売れなくてもよいから作ってくれ』と依頼。実は、少しくらいなら自腹を切ってもよいという覚悟だった。揚ちりめん発売後、確かに1年目は売れなかったが、2年目から売れていった」(同)。

自らリスクと責任を取るリーダーの姿勢が、商品開発を加速させたといえそうだ。

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